ブータンのゾンカ語文字紙幣
旧フランス支配下で流通していたインドシナのピアストル紙幣。ベトナム語、クメール語(カンボジア語)、ラオス語、漢語の各文字で記されている
シンハラ文字のスリランカの2ルピー紙幣
パキスタン北西部辺境州ペシャワルにある、アフガン難民を収容する病院の看板。英語以外にアラビア語とアフガニスタンのパシュトゥーン語が記されていた
チベット仏教の信仰に篤いブータンの国には、歴史ある古寺が多い。マニ車を一回回すと、経典を一回読んだことになり、少年僧たちも楽しそうに回す。マニ車に記されているのは、ゾンカ語(ブータンの言葉)。ブータン、ブムタン郊外で
ラオスの小学校で、先生が黒板に書いたラオ文字を一文字一文字発音していく小学生。正解すると児童全体が拍手する。ビエンチャンの公立小学校で
アジアの文字
 アジアの文字は多様だ。漢字文化圏、アラビア文字文化圏以外に、ヒンズー文字、シンハラ文字、クメール文字、タイ文字、ビルマ文字、チベット文字、モンゴル文字など、無数にある。アジアの文字地図を描いてみれば、複雑で、雑多で、実に豊かな彩りと模様を織りなすだろう。
 無数に散らばるアジアの文字文化の多彩さは、多様なアジアの文化のあり方そのものでもあり、ヨーロッパ文化圏とは根本的に異なった、一つの顔を見せてくれる。
 本来人間の文化の型だけ、文字の種類があっても自然だろう。文字は文明の歴史そのものかもしれない。アルファベット圏の広がりは、そのままローマ・ヨーロッパ・キリスト教文明の流動活力を表し、単一で拡大を志向する側面を象徴しているかもしれない。
 漢字のように、文字そのものに意味を持たせ、精神の表徴とする表意文字文化のあり方も、一つの深い根をあらためて感じさせてくれる。
 文字圏の広がりと宗教・精神性の広がりとは、ほぼ一致しているように思える。文字の広がりは精神活動の広がりとも言え、アジアの文字の多様さは、同時にその活動の複雑さ、ある面から言えば豊かさをも表していると言えるだろう。
 現代のコンピューター社会は、これらの多様な文字言語をどう結び付け、どう共通化させていくのか、二一世紀の文化の方向の一つとしても興味深いものがある。
 今月はアジアの文字の多様性に触れ、アジアの文化をやや変わった角度から眺めてみよう。
イスラエルの東エレサレムには、ユダヤ人、パレスチナ人が入り交じって住んでいる。路地の壁にはヘブライ文字、アラビア文字、アルファベットの三種類の文字が記されていた
複合民族国家のマレーシア。クアラルンプールのある会社の看板には、英語、マレー語、アラビア語、タミール語、中国語と、マレーシアのすべての民族言語が記されていた
その2
その3
その4
その5
ヨルダン・アンマンの小学生たち。授業を終えた子供たちは、アラビア文字で記された教科書やノートをだいじに抱えて家路につく
その1
アジアの文字
写真■平早 勉