アジアの街角からF インドネシア・ロンボク島(ギリ・アイル) 第一弾

取り残された楽園


目の前は飛び込みたくなるような海(ギリ・アイル)

 ロンボク島はバリの東隣にある島。バリよりも15年ほど開発が遅れていると言われ、観光地化されたバリより素朴な雰囲気が残っている。また、ヒンドゥー教徒の島であるバリに対して、イスラム系住民が多い。

 島の西部にセンギギビーチ があり、北西部沖に3つの小島(ギリ・トラワンガン、ギリ・メノ、ギリ・アイル)があり、ボートでアクセスできる。



ロンボク島からギリ・アイルへ渡る渡し舟

インドネシアでは定価がなく、全て交渉次第。
そして、騙される方が悪い。

船着き場の手前に小さな売店があり、「島にはこういうモノは売っていないから、舟に乗る前にここで買って行け」と言われる。

店に入ると、先客が蚊取り線香と日焼け止めを買っていた。
島に蚊取り線香は売ってないのかと尋ねると、ない、という。
疑わしげに念を押すと、店の者ではない者までが、「絶対ない」「誓って、ない」と力説する。
値段を尋ねると、「さっき買ってたあの人に、いくらで買ったか訊いてみて」と言う。
その白人の中年夫婦は、法外な値段だと怒っていた。
しかし冷静に考えてみれば、村もあって土地の人も住んでいて、外国人も多く訪れるリゾートに
生活雑貨を売る店がないはずがないではないないか。
そう思いなおし、店を去った。
すると店の男はどこまでもどこまでもしつこくつきまとってくる。
レジ袋に入れた蚊取り線香を私の手に握らせようとし
「オレらだって食べてかなくちゃいけないんだよ」と、同情を引こうとする。
 
いったん気分を害したものだから、こっちもガンとして譲らなかった。
だが彼らのことを、根っからの悪人とは思えないのである。
日本人が知らない土地で快適に過ごすために、千円や2千円をケチったりしないことを
彼らは知っているのだ。

やっとの思いで島に渡ると、たくさんの馬車(ロバ)が並んでいて、着いた舟から降りてくる客を待っていた。
値段はなんと5万ルピア。町ならその10分の1でタクシーに乗れる。
言いなりに払っていては、地元のためにも、他の旅行者のためにもならない。
とんでもない!と手を振って歩きだすと、4万、3万、と少しずつ値段が下がるが、それでもまだ高い。
だが、それ以上追いかけてくる馬車はなかった。

私は、歩いた。


文・写真:Kumiko Miyano



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