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中国貴州流離旅行
スケッチブックを携えて
その2
村田広幸
絵・写真・文


    貴陽駅     1996.4.12 貴州省・貴陽

 貴州省の省都・貴陽(グイヤン)。上海からだと特快の列車で五十四時間かかる。この時の私は廣西壮(ゴワンシーチワン)族自治区の南寧(ナンニン)から二十一時間かけて貴陽に到着した。“貴州は三日の晴天無し”と言われるがやはりこの時も曇り空で肌寒く、南から北上していった私は上着をもう一枚羽織ることになった。この絵を描き終えてから近くの食堂で温かい物を食べ、体を暖めた。





水も空気も綺麗な場所での生活。川で洗濯している光景に出会った
1993.10.31 貴州省・雷山(レイシャン)近辺




 菜の花咲く田圃   1996.4.17 貴州省・台江県・朗等村
 
 晴れた日の昼下がり私は一人無為の時を過ごしていた。今までの旅のこと、上海に留学していた時のこと、友人のこと、家族のこと、今後の人生のこと、……様々な思いを巡らせながら。何時間いただろう、或いは数分だったのかもしれない。時間に縛られない旅の生活を送っていた私はポケットの奥に時計を放り込んでいた。しばらくしてから目の前の風景をスケッチして清々しい気分になって来た道を引き返した。




 清水江(チンシュイジャン)と対岸の村     1996.4.20 貴州省・施洞

 「俺の好きな風景を描いてくれ」 この村で知り合った三人の若者のうちの一人が言った。都会に憧れているだろう若者の気持ちとして近代的なものを想像していた私は、そんなもの描きたくないよ、なんと言って断ろうか…と心の中で思いながら彼らの後に付いて行った。「ここさ」と言って彼の指差す方向を見ると心休まる風景が目の前に広がっていた。彼らも自分の生まれ育ったこの村を愛し、美しい自然の織り成すこの風景を誇りに思っているのだろう。そう思った私は彼らのために夢中でこの絵を描いた。




天秤棒で荷物を運ぶ少女達。楽しそうに笑いながら歩いていた
1993.10.31 貴州省・雷山(レイシャン)近辺




 川沿いの三元宮     貴州省・貴陽

 四月の曇った日の午後、あても無く貴陽(グイヤン)市内をうろついていると川沿いに中国風建築物が建っているのが目に止まった。後方の近代的なビルとの対照的な風景に都会としての貴陽らしさを感じた私はラーメン屋の屋台で椅子を借りスケッチを始めた。交通が激しく人の往来も多いこの町で私は一人静かに筆を動かしていた。


 瀑布ビール  1996.4貴陽にて採集
 貴州省といえば黄果樹瀑布があまりにも有名で、それで貴州には瀑布という名のビールがある。貴陽市内では90ビールと共によく飲まれている


 90ビール   1996.4台江にて採集
 貴州省で一般的に飲まれているビール。省都貴陽ではどこの店にも置いてあり、小さい町に行っても大概置いてあった



 煙台ビール   1996.4安順にて採集
 このビールは貴州省から遠く離れた山東省の沿岸部にある煙台(イェンタイ)という町で製造されたビール。なぜ貴州省で飲まれているのか不思議だ



 騰翔ビール   1996.4凱里にて採集
 銅仁(トンレン)という地方の町で製造されているビール。私が訪れた町でこのビールを置いている店は少なかった