@ワシオルでの洪水
































C火山灰で覆われたメラピ山周辺地区
*連載17 「続く天災 
                   
エッセイスト・ラフマン愛



 温暖化が進行し、世界各地で異常気象が観測されているが、インドネシアもその例外ではない。特にこの10月は天災続きで悲しいニュースばかりであった。

 10月5日、西パプア州ワシオルで、大雨による洪水が起こった。インドネシアでは、特に首都ジャカルタでは、冠水や床上浸水は日常茶飯事で、家屋の2階からゴムボートで救助される人々を何度となく見てきた。しかしながら、このワシオルの被害はそんなどころではなかった。

 村全体に流れる濁流。木も家も何もかもが流れ行くのみ。31戸の家屋が丸ごと流され、数千棟が水に浸かった。159人が死亡、700人以上が負傷という惨事であった。

 その後10月25日には、西スマトラ州付近の海域でマグニチュード7.2の地震が起こり、その近くのメンタワイ島に大津波が押し寄せた。449人が死亡、400人以上もの負傷者が出た。しかしまだ余震は続いており、現在約1万5千人もの人が避難生活を送っている。

 スマトラ島と言えば、2004年12月に起こったスマトラ島沖地震での津波がいちばん被害が大きかったが、それを機に、毎年のようにスマトラ島沖で地震が起こるようになった。いつも残念に思うのだが、毎年地震が起こっても、たいてい同じような被害状況で、次回に行かせる防災対策は施されていない。今回も人災ではないかと思うような状況であった。

 海上に置かれている津波観測装置が故障しており作動しなかった。さらに地震直後、気象庁は、津波の心配はないので避難している人は帰宅するよう発表した。が、その後、不幸にも津波はやってきた。学校3棟、家屋174棟全壊という被害は仕方ないかもしれないが、気象庁の誤りさえなければ死傷者はもっと少なかったのでは、と腹立たしさをおぼえる。ビニールにくるまれたいくつもの遺体、遺体回収作業を黙々と進める人、その横で立ちすくんだまま涙をおさえる数人の女性、悲惨な映像が私の目に焼きついて離れようとはしない。
 

A津波後のメンタワイ島

 翌26日、今度は中部ジャワ州のメラピ山が噴火した。9月20日ごろから噴煙が出始めており、29万人の周辺住民には避難勧告が出されていた。しかしまだ大丈夫だと思い居残っていた住民、家畜の世話のため一時帰宅した住人の546人が死傷した。現在も大量の火山灰が空気中を浮遊しており、大変な被害が出ている。特に、世界遺産でもあるボロブドゥール遺跡では、火山灰掃除のため、1週間観光客立ち入り禁止となった。マスクをした避難民たち、皆が皆、ひたすらほうきで灰を掃いている。いつまでこの灰は降り続くのか、元の生活にいつ戻れるのか、掃除をする彼女らの目は、不安の色でいっぱいである。メラピ山周辺の村々は真っ白になってしまった。一日も早く緑の木々と子供たちの笑い声が帰ってこれるよう願ってやまない。




B噴煙を出すメラピ山

 この3つの災害には、それぞれ軍が救助活動をしており、救援物資も届いているようだ。また、テレビCMや銀行では義援金を募っている。それはそれで今しなければならないことだが、その次の課題として、まずは人々の防災意識を高めることが必要である。インドネシアに住んで5年になるが、避難訓練など見たことがない。おそらく一般庶民は誰もしたことがないだろう。自然災害に備えられるよう、十分な防災対策を政府は練らなければならない。亡くなった方々のためにも、今後の被害を最小限に食い止められるように。もうこれ以上の悲劇を生むことは、国民が許さないであろう。


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