住宅兼店舗(ルコ)



*連載10 「インドネシアの地価高騰中」 
                   
                   
エッセイスト・ラフマン愛

 最近は少し落ち着いてきたとはいえ、インドネシアのインフレはここ数年激しい。毎年だいたいラマダン(断食)シーズンに全体的なものの値が上がり、断食が終わればまた安くなるのではと言う甘い思惑を踏みにじり、その跳ね上がった値段がだんだんと普通の値段となっていく。確か4年前は鶏一匹14,000ルピアだったのが、今では25,000ルピア。約1.8倍になっている。その他の日用品から大きな家具まで、ここ5年でだいたい1.2倍から2倍物価上昇している。「また値上がりか」この言葉が口癖となった今、日本にはいつ帰国しても牛乳が178円でホッとする。

 中でも最も価格が上昇し続けているのが土地。地価が割れるなどということはまずない。毎年2割から3割の地価高騰を続けている。5年前に購入した我が家の土地、今では買ったときの2.2倍の値で売れるらしい。隣の更地を購入した人に値段を聞いて、身近に地価高騰を感じたのだった。
 
 そんな地価高騰に乗じてか、新興住宅地があちこちに建てられ、まさに建設ラッシュである。同じ形の家がずらっと並んでおり、景観が統一されている。インドネシアの住宅地は、だいたい入り口が一つで、その入り口には警備員室があり、何人かが常駐している。中は、通りによってタイプ別の家々が建ち並び、学校が一つある。そして入り口の外側には、ルコという2階建てもしくは3階建ての店舗兼住宅が長屋のように何軒も連なって建っている。建ててから売る場合もあるし、建てる前に注文住宅として受け付けることもある。
 

新興住宅地@          

 中でもCitra landという住宅地建設会社が今人気である。ジャカルタやスラバヤなどの都市から、地方、そしてベトナム・カンボジアなど海外にも進出している会社である。マカッサルにも今建設中で、来年中には完成予定だそうだ。何がどよいのか知りたくて、モデルルームの見学に行ってきた。それが見学だけのつもりが、本当にここに引っ越したくなるくらいの素敵な住宅にうっとり。インドネシアでは珍しい西欧風の外観。だが中はお手伝いさん用の別室があるなど、インドネシア人にも使い安い仕様。各部屋には壁紙がしてあって、床はフローリング。お手伝いさん用の部屋以外は、シャワーやバスタブが取り付けられている。ちなみに我が家のある住宅地や一般住宅は、壁紙などなく、コンクリートむき出しで、床はタイル。和式便器と貯水槽という簡素なユニットバス。インドネシアの住宅の、建築デザイン最先端をいっているように思えた。  


新興住宅地A

 さて、気になるのは値段。いちばんいいタイプで28億ルピア(約2800万円)。ちなみに我が家のある住宅地のいちばんいいタイプので、7億ルピア(約700万円)。それなりの値段であった。しかしそれでももう残りあと3件なんだとか。買い手の8割が中国系インドネシア人らしい。こういうことを聞くと、この国はお金の回るところが本当に偏っていると感じる。Citra landは明らかに富裕層をターゲットとしているが、中間層をターゲットとした、平屋のこじんまりした住宅は3億ルピア(約300万円)で、ローンを組んでなんとか背伸びできるという層の人たちの購買欲をそそる。銀行も国の経済を停滞させるまいと、ローンを組みやすく買いやすくしている。地価が高騰しているのは目に見えていて、買うなら今、という感も皆持っているのだろう。

 国内消費がGDPの50%以上を占める消費大国インドネシアは、不況知らずと言ってもいいほどにインフレ、地価高騰を続けている。もはや発展途上国とは呼べない。中国やインドに続く、第3の新興国になりつつある。何十年後かには日本経済をおびやかす存在になっている予感がする。インドネシアの経済発展、今後に期待できそうだ。



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