船着場                



所狭しと並ぶ魚介類



仕入れた魚を村々へ売りにいく魚売りたち



シーフードレストランでは、店の前で焼いてくれる



レストランで出された魚。上はリチャリチャという唐辛子ソースをかけたものである。 
*連載8 「インドネシア一のシーフード」


 インドネシアは大小1万8千以上もの島々からなっており、その大部分が海に囲まれている。当然のごとく海の幸には恵まれた国だ。その中でも私の住む南スラウェシ州マカッサル市はインドネシア一のシーフードであるとも言われている。どの家庭でも毎日おかずには魚介類が普通で、野菜も肉もなく、ご飯と魚1匹を家族でつつきあって食べるという光景も稀ではない。

 毎日朝8時前から「魚―、魚―」や「カツオー、アジー、いかなごー」と声を張り上げながらバイクで魚売りがやってきて、パンパンと手をたたけば家の前で止まってくれる。我が家のおかずはいつもその魚売りが持ってきた魚次第でメニューが決まる。お気に入りの魚売りがいて、いつもその人から買う。多数の魚売りが毎日毎日カツオ、アジ、いかなごとお決まりのものしか持ってこないのだが、私のお気に入りの魚屋さんは、タイやサワラ、カニ、貝など品を日に日に変えて売りにきてくれる。日本のように切り身のパックでなんて売られていない。どんなに大きくても買うなら1匹丸々で、ボールを持って外へ買いに出る。一度、マグロはないのかと尋ねたら、前もって言っておいてくれれば仕入れてくると言ったので、それならその仕入先に行ってみるよと場所を聞いて先日行ってきた。

 朝6時マカッサルのポートレー漁港、そこには多くの船が魚をおろして魚売りに売られていた。漁師と魚売りが所狭しと大勢いて、そのおっちゃんパワーに圧倒されてしまった。日本で野菜の卸売市場に社会見学で行ったことがあるが、比べものにならないほどの熱気と活気。海の臭いなのか、魚の臭いなのか、おっちゃんたちの臭いなのか、なんだかよくわからないすべてを含んだ港臭が漂い、女性で外国人である私が立ち入ってよいのだろうかと尻込みさえした。威勢のいいおっちゃんたちが、どんどんこれも写真に撮り、これも、これもと次から次へ自分の自慢の獲れたて魚介類を差し出す様に、いつもと変わらないインドネシア人の人懐っこさを感じた。エイやタコ、マグロやハマチなど普通の市場では見られない魚に私も心が躍る。次第に私は乗りに乗っていき、ハマチ、マグロ、イカ次々と欲しいものを買って提げて歩いていおり、夫になぜ今までここにつれてきてくれなかったのかと抗議したほどだった。





 このポートレー漁港には、10トンの水揚げ量がある船が、次から次へと入ってくる。その多くはカリマンタン島近くまで行く遠洋漁業用。あと、マカッサル近海で獲れたものを運んでくる小さい船も数多く入ってきている。天候により漁獲高は増減するが、昨今は減少傾向にあると漁師が嘆いていた。それは多分、乱獲や地球温暖化という人間の問題なのだろう。それでもやはりマカッサルはシーフードの町として有名で、水揚げされた魚が首都ジャカルタのほうまで取引されることが多い。また、インドネシアで需要のないタコは日本へ輸出されており、その他の海外へも各種の魚介類が輸出されている。マカッサル市内のシーフードレストランは、その日水揚げされた魚を生け簀に入れたり、クーラーボックスに入れてメニューとして出す。その日の獲れたての魚は何度食べに行ってもおいしいものだ。マカッサルは田舎で不便だとか、日本食が手に入らないと不平不満をよく言っていた私だが、この漁港に行ったことでそんなのが半減した。魚料理に精を入れようではないかと。元気をもらえるマカッサルの漁港。やっぱりインドネシア一のシーフードにまちがいないと思ったのだった。


(エッセイスト・ラフマン愛)


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