宝迫典子写真展

大陸に生きる人々 ― 茶仏 お茶と寺廟のある風景 ―









会期:2010年3月29日(月)〜4月9日(金)
午前10時〜午後7時まで(最終日午後6時) 土曜・日曜・祝日休館

場所:コダックフォトサロン(東京都千代田区外神田3−12−8 住友不動産 秋葉原ビル12F) 地図
最寄り駅:JR/TX(つくばクスプレス)/東京メトロ「秋葉原」駅より徒歩5分
東京メトロ「末広町」より徒歩5分 

茶仏に寄り添って生きる人々

今回の写真展のテーマは何ですか?

宝迫:『茶仏 お茶と寺廟のある風景』執筆のために撮影した数万枚の写真のなかから、本には載せなかった人物写真を集めました。テーマがお茶とお寺だったので、旅行中はあえて人物は撮影しないようにしていました。でも魅力的な表情をした人たちに多く出会い、気が付いたらたくさんの人物写真が手元に残っていました。その中から、特に思い出や強い印象のある写真を選びました。


絹の伝説(中国・新疆ウイグル自治区ホータン)
シルクロード(絹の道)は茶の道でもあった。


2002年〜2009年にかけて、トルコ、キルギス、ウズベキスタン、ミャンマー、韓国等で撮影された作品です。全て、中国から陸と海のシルクロードを通ってお茶が伝わった大陸の国々に暮す人たちです。意識したわけではないのですが、子どもの写真が多くなっていました。やっぱり、表情が生き生きしているからでしょうか。


茶を掘る(中国・雲南省)
この地では茶葉を竹の筒に詰めて、土に埋めて発酵させる習慣がある。


来場された方には、「お茶とお寺はどこに映っているの?」と聞かれますが、「この写真の向こう側にいます」と答えています。お茶とお寺と人間は、それだけ密接な関係にあります。



お茶に導かれて大陸へ

アジアやお茶に興味を持ったきっかけは何ですか?

宝迫:英語の次に役に立ちそうな言語は何かと考えてみた時に、人口の最も多い中国語だと思いました。打算的な理由ですが、社会人になってから中国に短期留学しました。中国語のバックグラウンドは全くありませんでしたが、外国人が誰もいないような天津の田舎の大学を選びました。その時に、語学を上達させるためには、単純に言葉を学ぶだけでなく、映画やお茶などその国の文化に興味を持って、好きなことをもっと知りたいという気持ちを持つことが大切だと感じました。天津では、茶葉をインスタントコーヒーの空きビンに入れて持ち歩いて、出先でお湯をもらって飲む人々の姿を目にしました。お寺が好きで見学に行っても、僧侶がお茶を栽培していたりして、お茶がとても身近な存在でした。お茶について調べ始めるととても奥が深く、他の省や国の茶文化に繋がっていきました。毎日違うお茶を飲んでも、一生の間に飲みきれない種類のお茶があります。日本でも唐に渡った最澄と栄西がお茶を持ち帰ったという伝説が残っており、大陸の茶文化を追っていくと自分の国のルーツを探ることにも繋がります。


空にかかるダンカ(中国・西海省西寧)
チベットの茶文化は唐から嫁いだ文成公主が持ち込んだという。




多彩な茶文化について知ってほしい


踊るナン屋さん(中国・新疆ウイグル自治区ウルムチ)
ここではナン(パン)がお茶のお供。

今後はどのような活動を予定していますか?


宝迫:4月20日〜25日、埼玉県の入間市博物館(リンクを貼る)で引き続きこの写真展を行います。
 6月5・6日に、京都の吉田神社の境内で開かれる吉田大茶会に参加します。お茶の都・京都で、様々な国のお茶を紹介する催しです。私は、お茶の聖地・雲南省のお茶のブースを担当します。日本ではまだ紹介されていない、茶葉も水色も濃い紫色をした「紫娟茶」をご用意するので、ぜひ立寄って頂きたいと思います。他にも大量のプーアール茶葉を煮込んで飴状に固めた茶膏や金毫(紅茶)など、珍しいお茶を飲んで頂けます。
 韓国農林省の認定する茶名人が栽培した緑茶、福建省の岩茶(ウーロン茶の一種)など、あまり知られていない名茶が一同に集まるので、様々な国のお茶を試してみたい方には絶好の機会です。
 こうしてお茶を通して広がっていく「茶縁」というのは本当に不思議で楽しいもので、これからも日本人に大陸の茶文化についてもっと知ってもらうために、活動を続けていきたいと思います。

※展示されている写真は購入可能です。

取材:冨久田純

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宝迫典子(ほうさこ のりこ)
多様な茶文化の紹介をライフワークとして、様々な分野で活動している。中国政府認定評茶員・茶芸師。日本旅行作家協会会員。
著作:『茶仏 お茶と寺廟のある風景』(佼成出版社)、台湾の絵本作家ジミーの3部作『君のいる場所』『君といたとき、いないとき』『地下鉄』(小学館)(マゾンへのリンク貼る)など、他多数の絵本を翻訳。
現代中国映画上映会の実行委員でもある。
HP:http://www.shinowazuri.com/





暖かいフェルトを作る人たち(キルギス)
定住しても、遊牧民の誇りをフェルトのデザインに刻んで忘れない。







チャイハネの夜(イラン)
チャイハネ(喫茶店)は、社交場としての役割を持つ。







清らかな泉が流れる(韓国・南道海智異山)
世俗を離れて山中に住み、修業として茶を栽培するのは功徳を積むことだ。






ターキッシュ・ディライト (トルコ・イスタンブール)
お茶にお菓子は付き物。






一日を茶館で過ごす老人(中国)
大陸では、時が悠久の大河の如くゆったりと流れる。