〜二人だけの同人雑誌。傾向などにはとらわれず、好きな文体で〜
照葉樹

・不定期発行
・A5判、70ページ前後
・500円(税込)

FAX 092-481-0702
http://members.jcom.home.ne.jp/haruko-f/shoyoju.html



● 「照葉樹」紹介  水木怜


 照葉樹は、垂水薫、水木怜の女性二人だけの同人誌です。
 様々な葛藤を経て、同人誌以外には私たちの進むべき道はない、と昨年の春、創刊に踏み切りました。
 それまでを振り返ってみますと、二人とも、ただ書きたいという感情が先行して、無我夢中で走ってきた気が致します。
 年々、若年層の進出はめざましいものがあり、市場に出回る本を手に取ってみても、そこには私たちとは全く異なる文章の世界がひろがっており、私たちは自分の小説世界の在り方に悩みました。
 それでも、書きたいという気持ちは強く、挫折することだけは避けたいと思い、日々、書き続けては、発表の場を見いだそうと、投稿も数知れず試みてまいりました。
 しかし、懸命に書くことに専念する私たちのまえに、どうしても避けて通れぬ壁を強く意識し始めたのは、ここ二年前からのことです。
 例えば投稿一つにしても、傾向と対策を考え、年齢の層を意識し、ニーズに合ったテーマや言葉を選ぶ努力をしながら書くということに割り切れぬ疑問を持ちました。
 私たちは、今までお互いに異なった人生を歩んできました。
 垂水は学生時代より文章を書くことに強く憧れを抱いていました。しかし、学習塾の講師の道を余儀なくされ、年を経て、一応の区切りがつく年齢になったとき、諦めかけていた書くことへの夢が燃え上がり、もはやその想いに抗うことは不可能でした。現在も夜は塾の講師として、昼は非常勤ながら別の仕事を持ちつつ、限られた時間を小説世界に浸ろうとしています。
 水木は今までの人生のほとんどは音楽の世界に身を置いていました。収入と生き甲斐が一体となった音楽の仕事は、身体の故障さえなければ恐らく一生続けたと思います。思うように音楽活動が出来なくなる焦燥感のなかで、手探りで辿り着いたのが文学の世界でした。書くということ、それは音楽に通じます。一つのモチーフを自分の感性で自在に組み立て、情熱を傾け我が子を産み出すが如くに創作する喜びを、文章の世界にスムーズに移行することが出来ました。
 こんな私たちの人生経験をふまえて、傾向などには一切捕われず、自分の好きなジャンルで、好きな文体で、思う存分書いてみたいという二人の気持ちが一致して、同人誌活動に踏み切った次第です。

 左・水木怜、右・垂水薫

 発行は年二回、春と秋を目指しています。
編集発行までの作業は、二人が交互に責任を持つことにしました。
 同人誌を発行したことで、私たちの前に一つの大きな道が開けたと強く感じています。
 まず全国に、文学を愛し志す多くの方々がおられるということを知りました。いままで福岡の一都市で、孤独にこつこつと書いていた私たちにとって、それはまるでモノクロの世界から一挙にカラーの世界が開けた感がありました。
 同人誌を通じて、いろんな方との交流や、作品の合評の場を持つことが出来ました。同じ方向を見つめて熱く語り合う友人との出会いは同人誌に踏み込むことにより得ることができた何よりの財産と確信しています。
 自分の作品が人の目に触れ、評価をいただくこと…。それが、これからの作品への確かな足がかりとなり励みとなっています。
 私たちを応援してくださる方々から多くのアドバイスを戴きました。
 同人を増やしてはどうか、一人一昨品のほうが良いのでは、等々、貴重な意見を賜りました。
 私たちも慎重に考え、話し合いましたが、まず、長く同人誌を続けることを考えた場合、各々の異なった感性が摩擦を生じて本来の目的である、創作活動に支障をきたすのではないかとの危惧を持ちました。作品の数についても、幅広いジャンル、スタイルに挑戦したいという二人の意見が一致して、限定せずに自由な考えを持つことに致しました。
 同人誌発行に踏み切るにあたり、その顔ともいうべき表題を随分考えましたが、試行錯誤の末「照葉樹」と致しました。
 二人が九州に在住していることでもあり、九州に多くみられる緑濃い照葉樹の葉が、暖かな日差しの中で豊かに葉群れを成すように、私たちも確かな足取りで号を重ねて行きたいと願いを込めてつけたものです。
 照る葉の艶やかさに次号創作の意欲を重ねて、一層頑張りたいと思っております。(「文芸思潮」17号掲載)
 


第3号(2007.5.15)目次

垂水薫「羽ならし」
水木怜「鳴らない電話」
水木怜「靄」