井上光晴文学伝習所前橋分校から


クレーン

・年1冊発行
・A5判、150ページ前後
・価格700円

〒371・0035
群馬県前橋市岩神町3-15-10
わだしんいちろう方 前橋文学伝習所
TEL&FAX027-235-3999



●「クレーン」紹介


 一九七九年の創刊です。『クレーン』という誌名は、井上光晴著『虚構のクレーン』より、井上光晴氏自身に命名してもらいました。井上宅で、私たちが提案した「風嶺」に、「これでもいいんだけど、なんか俳句の雑誌みたいだな」と言ってしばらく考え、「虚構のクレーン」はどうかと井上さんが提案した。それを横で聞いていた井上夫人が、誌名に「の」が入るのはおかしいわよといわれ、「クレーン」に落ち着きました。創刊時は、建設機械であるクレーンの一般的なイメージと文芸同人誌のイメージとのギャップがはなはだしく、説明するのに困惑してしまいました。
 前年度の井上光晴文学伝習所前橋分校(後の前橋文学伝習所)の参加者の有志十五名が、創刊メンバーでした。二十代から六十代までさまざまな職種の人が集まりました。初めて小説を書くという人が、半数以上いました。文学伝習所の師である井上光晴さん(井上さんはセンセイと呼ばれることを嫌っていた)に、毎号、合評会に出席していただき、厳しい批評を受けました。井上さんは、書くことと生きることとの関係を常に問い続けることの重要性を、私たちに訴え続けました。
 その井上光晴さんも、一九九二年に癌で亡くなりました。それは私たちに、自立していくことを強いるものでした。私たちの多くは、自分で道を切り拓くことを二の次とし、受動的になっていました。今さらながら、井上さんが口癖のように言っていた、君たちは努力が足りないという言葉が身につまされたものです。その後、井上光晴という類まれなる強烈な個性の持ち主である師を失い、会員は少しずつ減っていきました。それでもぼくらひとりひとりの中に、井上光晴の生きざまがいろいろなかたちになって残っています。しばらくして、東京の『新文学伝習』が解散し、そのメンバーが『クレーン』に仲間入りしてきました。井上光晴さんが亡くなってから新メンバーの加入がほとんどなかったので、これは強力なメンバーとなりました。
 二〇〇五年に、第2回富士正晴全国同人雑誌賞特別賞を受賞したことが、大きな励みになりました。『クレーン』という誌名を群馬県内外の人たちに知ってもらえるよいきっかけとなりました。
 年一回の発行(二〇〇部)で、『31号』となりました。『30号』は、井上光晴特集と「ハンセン病療養所入所者からの返信」が話題を呼び、完売しました。
 現在は、会員十名で、五十代から六十代が中心です。群馬県内の会員は二名となり、埼玉、東京、千葉、沖縄と分かれています。
 『17号』以来、私の個人編集が続いています。同人誌といえども、自分自身が読みたい雑誌をつくりたい。まず自分が読者として楽しめる雑誌をつくっていきたいとおもってきました。
 心がけていることは、開かれた同人誌とすることです。同人誌はとかく内向きになって、部外者が読むことを想定した編集になっていないのが大半でした。そこで、『クレーン』では、執筆者紹介欄やイチオシ本コーナーを設けて、部外者にもとつつきやすくしました。また、特集エッセイを組んで、会員以外にも広く原稿募集しています。そのため、会員以外の執筆者は毎号います。
 マンネリ化を恐れて編集を交代することも考えましたが、井上光晴さんと懇意にしていた編集者から、持ち回りはよくないとアドバイスされ、とにかくやれるところまでやろうと決意しました。今後も、おおいに楽しみながら文芸同人誌の可能性にチャレンジしていくつもりです。
※ホームメージ‥UR http://www.geocities.jp/hiwakil/doujin/kakushi/crane.html
              http://www.bungeinavi.com/crane/index.html


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前橋文学伝習所事務局 和田伸一郎

(「文芸思潮」35号掲載)


 

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