森下 誠






ウルトラマンになりたくて



小学生のころの夢
ウルトラマンに憧れて
ウルトラマンになりたくて
僕だけのウルトラマンを
ノートに描いて夢みてた

その名前はウルトラドキ
胸のカラータイマーが
丸ではなくて三角形
変身するのは この僕で
戦闘時間が十五分と
ちょっと長めが特徴だ

でもでも 残り五分を切ると
三角タイマーが黄色に点滅し
ドキドキ ドキドキ ドッキを打ち
胸が圧迫されちまう

エネルギーの源は
太陽ではなく 月の光
日が暮れると この僕は
月を探して 夜空を見上げ
密かに ドキに 変身し
独りブツブツ 吠ざきながら
木や壁 相手に戦い挑む

でもでも こんな姿を友達に
見られてしまえば カッチョ悪い
だから ドキは 月夜にしか
変身できないヒーローだった・・・・・・
 
そして月日は流れ去り
僕が二十歳になったとき
憧れのウルトラマンに
なれるチャンスが訪れた

着ぐるみショーのスタッフに
念願かなって 採用され
夢の実現が目の前に・・・

とうとう 僕も ウルトラマン
会場に着くまでは
ワクワク ドキドキ 高鳴る鼓動

だけど 世の中 甘くはない
新米の この僕は
ウルトラマンになれるどころか
怪獣の着ぐるみさえも授かれない
なんと 宇宙星人ということで
ねずみ色のタイツ姿がコスチューム

ずんぐり むっくりの このからだ
こんなに醜い 宇宙星人 あり得ない
さらに ストッキングみたいな 覆面を被らされ
これじゃあ ただの気持ち悪い
銀行強盗にしか見えないぞ!

ショーが終わって 子供たちと
ふれあいの時間がやってきた
僕の周りに来る子供
なぜか やんちゃな奴ばかり・・・・・・
「お前がいるから地球は平和にならないんだ!」
「早く自分の星に帰れ!」
「このぉ! 変態野郎!」
こんな罵声を浴びながら
蹴られ 殴られ ボコボコに・・・・・・

あまりの酷さに耐えきれず
こうなりゃ 僕も最後の手段
そうだ 今こそ ウルトラマン!

遠い記憶を呼び覚まし
「だぁるまさんが こおろんだぁ!」と一声 叫び
ウルトラドキに変身だ!

これで もう 負けないぞ!
だけど ムキになれば なるほどに
子供たちも さらに さらにと燃え上がり
結局は この僕が 袋だたきに されるだけ・・・・・・

ドキドキ ドキドキ ドーキドキ
胸が激しく ドッキを打つ
ついに とうとう 力尽き
胸に手をあて 倒れ込んだ

・・・・・・ 

ウルトラマンになりたくて
今日まで夢見てきたけれど
ウルトラマンになりそこね
夢は儚く消え去った・・・・・・