御笠川マコト






臆病者のマーチ




臆病者のマーチ

君の耳にとどくように

テンポが速いから

喉の奥に隠しきれずに



声にしてうたえば

消えてしまいそうだから

君の鎖骨の上に

そっと中指をおいて

振動だけでも伝えたい



鏡の上に右手を置いて

指紋を確かめてる

心の中の

どよめきが

銀の波をつくるから

自分の顔すら

ゆがんで見える



臆病者のマーチ

経験だけでは

凌げないから

出会うたびに

デビュー戦のよう

臆病者のマーチ

勝ち負けのみえない

ゲームに溺れる

携帯が揺れたとたん

終わってしまうことが

もう、ありませんように

今度こそはと

右手の中指と人差し指を

クロスさせたなら

両目を閉じて

自分の額においてみる