merongree




人工衛星、泣いている


陽気でなければ何事かをなす資格はないのだって
己に言い聞かせることにしたんだ こないだの星の爆発をみて
だって私の懐にあるなぞの石だって何に引火するやら
分かったものじゃないから悪意はなるぺく粉砕することにして
明るい、陽気な感情に錨をおろすことした 最も暗くて重くて
私を地球の裏の海まで引きずろうとする あの暗い錨をそこに

もしも副作用の殺戮なんていうものが起こらないのなら
漂流する氷のうえに乗っかっている二頭のアザラシとか
そんなものが殺されないのなら私しどけなく爆発し続けたい
母子のように兆しと世界で二人きりになりたい
芳醇な肉の先端にあってウインクしてくるような
桃色をした乳房にぶらさがって猿の子のように
放埓でいたい守られている者の無邪気さを毛むくじゃらに
振りかざしてか弱い爪で何者かを傷つけたい
他方で飢えて死にそうになった母猿のように
黄色くて煩くて愛らしい者の上に覆い被さって
細い乳房を絞って何かのために呆然と祈りたい
自己犠牲を、自己犠牲をいちどはやらなくちや、
そんな期待を漠然と、敵もないのに提げた匕首、
そんな風に呆然とぶらさげながら路上にいる
無数の鳥が電線にとどまって私を揺さぶってる
背後には爆発したような白い空が残っていて、
私の覚悟より恐ろしいものが控えているんだと、
彼らの揃いの眼が言う
鳥目のくせに、と悪態をつく
夜になれば私のほうが強いんだからねって石を投げる
彼らのはるか向こうに石が落ちる音がして隕石が今日も
無人の屋根に落ちた模様っていうニュースがまた流れる
朝から大変なことばかりというけれど、
朝はようやく打ち明けていいのだといつも安堵して疲れた顔をしてる
朝は化粧する時間もないと言いながらいつの間にか女みたいに老けてる

引っ張り出した巻物がずっと広がり続けるように
ずっと夜だったらこれは終わらないで済むと思うけれど
アラビアンナイトでも何でもなくEU加盟国なんかで
実際にそんな国があったりする抽選で高いフロアをただ
引き当てたというそれだけのことなんだけれども
自殺する傾向が高いとかいう他方で割り切って本を読み
伝統的スポーツで使われる弓のラインで経済も発展していて
きれいな青い目で本を読むのでゆうめいな作家が出たりする
ああ逃げ場はなかった 外国なら埒は崩れてると思ってたのに
夕方のニュースで流れている薄汚れたシャツの栗色の髪の青年
まるで口を閉じるみたいに引かれた人工の赤道らしい一本の線
それがつるはしで若者にぶち破られたっていうあの崩壊の時から
朝はいつか打ち明けてくれると思っていたのにもう既にないのだと
遠い遠いアラビアンナイトの果てですが既に生活の埒は崩れ始めて
シベリア鉄道に乗ったところだからいずれ日本にも到着するはずだと
そのニュースをずっとずっと待ちくたびれているのだというのにまだ
海に飲みこまれている太陽は大汗をかきながらきちんと復帰してくる
あの水平線のどこかに土地があってそこには貪婪な蟻が住んでいるのに
蟻の巣穴にはとうてい入りきらない獲物なのか何もされずに戻ってくる
蟻 蟻はただ黒いからかあまりにも太陽にとって危険であるからなのか
こないだの猛暑のときにはかなり多くの兵隊が焼け死なされてた
かなり抵抗したらしくて爆弾を落とされたようにひしゃげた手足
神の愛なんてこういうもんだよなと思った 愛も憎も区別しないって昔から
言われているけれど摩擦熱がかかり過ぎている 彼には鉄槌なんか本当はない
ただ遊びで遠くからボールを放ってくるだけ 回転数の問題で熱いだけ……
何にも目撃することのない壊れた人工衛星 乳房のように埒を求めては
離れよう離れようとて苦しみ 沢山の排気ガスを撒き散らし漂ってる
特別に君を赦してあげようと恒星が現れる 己の重力の波紋の中じゃ
俺についてめぐっている限りは君は世界を目撃してるだけでいい
先ず指を切ってみせてくれないか、って言われて笑ってしまう
何時の年代の星の文化だよ 時代遅れの証しだなって羽根を少し折り
惜しむように手のなかで弄っている内に恒星が話し続ける
覚悟はあるのかと 飛ぶ覚悟はあるか 才能はあるだろうか
選ばれてここへ来たのか 失墜する確率は何パーセントか聞いてるか
船内のラジオみたいに繰りごとみたいなものが終わらないうちに、
私は思念なのか実際の習慣なのか分からない星の殺戮を行ってしまう
ただ己の欠片放っただけで重力のかんけいで爆弾みたいなものになる
少し体重が軽くなった気がする爆風のなかで見つける流氷のうえの蟻
ひしゃげた彼らの身体みて己の副作用のことを思い出す
こんな事がなければ己に搭載した悪意そのまま 尾のように引いて流れるのにな
彗星 じゃないけれど微笑が少しだけ軌道を戻し 重力の埒から解放してくれると
分かってからそのことは私にとって飛ぶことと同じぐらい重要になった
無言で突き進んでいた間に赤や黄色の見慣れない蟻たちが手についてた
私の軌道では
私は陽気であることを己に課した