木下奏







Metamorphose



はじまりは白い雨、とめどなく止むことを知らず、いつまでも、笑っていた、赤い自転車のキミは、薄笑いを浮かべて、梅雨の電車を見下ろした、少女の傘、少年のベーグル、見知らぬ男女の会話、どうぞご覧になって、とマダムに言われるまで、ただ目を伏せて全てを拒絶しようとしていた、私の頬が青く染まり、それは偽りへの現実だと知った、帰れない、あの部屋のテレビが、いつもついているのを不思議に思うのは、隣の部屋の男女がいがみあっているのと関係があるのだろう、きっとドロドロした黒い液体が、昼のドラマのように、とめどなく、主役と脇役を、交差させていく、知らない、知っている、この人間達を私は、どう解釈すればいいのだろう、いつだって周りが分かったふりをしているのを見て、私も分かったふりをしている、信号が青になったのを確認しても、横断歩道を渡ることができない、いや、できていたはず、たぶん、でも、いつからか、こわくなった、来るはずのないものが空から落ちてくる、来るはずのない人間もやってきて、来るはずのない恐怖が襲う、いつもの時間になって、私はテレビのリモコンを手に取る、それを押せば何かが変わるかもしれない、

(((変わったのはアナタとワタシの二分化された世界)))

変わったのかもしれない、導かれた言葉、光に纏わるすべてをアナタにもらったのです、やさしさをアナタに教わったのです、七色の色彩をアナタに与えられたのです、モノクロからカラーに変わった視界の裏に発光する命が埋め込まれて

「ありがとうありがとうワタシはアナタでした」
「ありがとうありがとうアナタはワタシでした」

I float significant words in the aquarium of non-daily life/He quietly inhaled my aquarium

非日常の水族館に意味のない言葉達を浮かべる/彼は静かに私の水族館を吸い込んだ