耳にタコ
「耳にタコ」
「ミミにたこ」
歌うように口ずさむユミ
意味を知って言っているのだろうか?
「ミミにタコっていうのはね
その事はもうウンザリっていうときに
言うのよ」
「わかる?」
「かあちゃん
ダッコ
ダッコしてェ!」
「ダッコ」
「ダッコは
耳にタコ!
わかった?」
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かわいいね
ユミとお風呂に入った時でした
ユミを湯船に入れて
私は髪を洗っていた時
「かあちゃん!
かわいいねェ」
と
いうではありませんか
「ありがとう」
「かあちゃん
かわいいねェ」
「ありがとう」
私は
十八才の頃
二才のボクから
「お姉ちゃん
かわいいねェ」
と
言われたことを思い出しました
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インストラクター
黒のタンクトップに
黒の半ズボン姿のお姉ちゃん
ユミに教えているのはなあに?
ジャズダンスの先生みたいな
お姉ちゃんより
「ただ今より
サーカスを始めます
失敗したときは
笑ってやって下さい」
お姉ちゃん達はそれぞれ
一輪車に乗り
それらしい曲芸を
見せてくれる
車輪を上手に繰りながら
片手にネコをだいてバランスをとっている
お姉ちゃん
大きな拍手と
小さな拍手が
空に透けていく
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赤い花
「お母さん
お化粧はまだしないの?
わたし待ってるんだけど…」
さいそくするユミ
化粧ポーチを持って来た妹の咲子は
笑っている
「早くお化粧しなさいよ」
化粧水
乳液
この透明なものはなあに?
紫外線予防の液体?
シガイセンって何かしら
でもいいのいいの気にしない
歌うようにおしゃべりするユミ
二人の娘の神妙な顔を
コンパクトから見ている私
ルージュを塗るときになって
ユミと咲子のはしゃぎぶりに驚く私
突き出た唇二つ
ぬってよ早く早くう
二つのチュチュに
今日も赤い花が咲きました
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入学前と入学後
ランドセルを背負って
家に来る人たちに
「一年生になってん!」
と
大得意のユミ
ランドセルを背負い一日中
家の中をくるくるまわるユミ
ランドセルが一番の宝物でした
入学後
「ただいま」
帰ってくるなり
ランドセルをほうり出して
遊びに行ってしまうユミ
ランドセルから早く逃れたくて
家の中で背負ったことも忘れて
なるべくランドセルを見ないように
しています
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