藤沢貴常   

 

 

飛行機雲

 

澄空を飛行機雲が

駆けていく

真っ青な空を

その白い跡が

駆けていく

 

あの雲には きっと

描いた人の

時間が刻まれている

思いが刻まれている

 

やがては消えていく

その姿に

切なさを感ずるのは

異なことだろうか  

 

 

春風の中を

 

気持ちのいい風に誘われて

ゆっくりと歩いている

 

優しいお日様と

いっしょに

 

木漏れ日と

風を

友達にして

 

ただ

歩いている

 

誰もいない公園を

 

歩いている・・・   

 

 

大輪の花

 

道路の片隅を

鮮やかなピンク色に変えている

 

大輪の花がある

 

向日葵のように

力強くはない

艶やかでもない

 

それでも

灰色の寂しげな世界を

 

色彩(いろ)豊かにして

咲いている

 

主役じゃない

でも

自分の居場所を知っている

 

そういう僕でありたいと

 

思わせてくれたんだ

 



寒の戻り



春だ春だと

喜んでいたのに

今日は寒いです



とっても



冬に戻ったみたいです



早咲きの桜が

満開だというのに

雪が降ったところがあるようです



小鳥達は

囀りを止めてしまいました

寒いからでしょう



でも

この戻りが

大切なんです

きっと



春に走り出すための

助走



そんな気がします





桜風



淡い

桃色の風

ほのかに香る芳香は

季節を告げて

優しく

すべてを

包んでいる



深呼吸して

胸いっぱい

吸い込もう



この風は

この瞬間にしか

味わえないものだから






隙間から



アスファルトの隙間から

タンポポが

その花を自慢するように

咲いていた



茎も葉も

曲がって

破れて

それでも

大きな花を咲かせている

鮮やかな黄色は



強さの証



見とれるよりも

感心するよりも

僕は

その強さが

羨ましくなった



隙間から

見えた命は

眩しくて





花のように



愛でてくれる人も

気にかけてくれる人でさえ

いない世界で

ただ

ひっそりと

あの野道に咲く

花のように

生きていこう



きっと

きっと

誰かが

気づいてくれると

見ていてくれると

信じて



太陽(みらい)を

みながら





茜色の太陽



茜色の太陽は

君のようで

温かで

寂しげで

去っていく



それが

たまらない

切なくて



茜色の太陽は

あなたのようで

孤独

憂いを帯びて

沈んでく



それが

苦しいほどに

悲しげで



何でだろ

こんなに

こんなに

泣けてくるのは





冷たい雨



その雨は

どこまでも

どこまでも

ただ

冷たくて



心を凍てつかせては

また

降り続く



パララ

パララと



音だけを

空しく響かせて