藍澤祐樹





夢無き世界と永遠の詩(うた)


夢という言葉に惑わされ
夢を創り出そうとする
脆く儚い 夢の世界

多くの夢の幻想を
たくさん たくさん 呑み込んだ
悪意と 衆愚の 永遠の世界

夢を持とうと 現を彷徨う
夢という名の 永遠の地獄

生きた亡者の群れに 無情の微笑み
少しの充足すらない 永遠の叱咤

真夜中の夢の中で 求められる夢を忘れて
束の間の 安らぎを得る 一夜で
無限に続く 永遠の夢
何処からか そして最期に聞こえるのは
終わりの無い 人々を鞭打つ 遠の詩(うた)…




傍観者


預言者の言葉は
当たっていたのだろうか
恐怖の大王とは何?

繰り広げられる内乱
激しさを増す宗教戦争
激しく貧しく餓えて諦めた人々
夢にまでみた二十一世紀(フューチャー)
誰もが楽しめる貧者の大地(パラダイス)
狡猾で残酷な機械(テクノロジー)
美名や軽蔑を楽しむ愉快な善人(パーソン)

僕は気まずくて
 恥ずかしくて
 苦笑して
煙草を呑み 酒を飲む
どちらにしても傍観者
やっぱり僕は傍観者

色の違う正義のぶつかり合い
大きな悪意と確信犯の邪悪
少しの善意と素敵な勘違い

やっぱり僕は観客席
拍手のし過ぎで手が痛い
やっぱり少しは罪悪感
笑いを堪えて嫌悪感

役者はぞろぞろ
脚本家は汗まみれ

音楽や悲鳴は
鼓膜を通じて
陶酔へと

斯して仮面舞踏会の
幕は また 上がる




あの丘に


瑞瑞しい 樹々の 繁る あの丘に
美しき 花花の咲く あの丘に
麗しき かの女性(ひと)は 住むという
大空は 毎日 晴れて
静かに 爽やかに
心地よい 風が吹く
雨の時でさえ 天は祝福し
恵みの慈雨と なる

太陽は 名残惜しげに 沈んでいき
せめてもと 夕焼けが 映える
夜は ランプの灯が 燈り
決まった時刻に 消えていく

夜は 星々と月が
競うことなく 静かに 見守っている

まるで 望んで そうするかのように
雷雲でさえ 場所を避け ゆっくりと
少しの間 沈黙をして
優しく 優しく 通り過ぎていく

あの丘に かの女性(ひと)は住んでいる
あの凛凛しく 優雅に流れる 独逸の言の葉

金色(こんじき)に輝く
柔らかく しなやかな あの髪が
縷縷と 流れる風に たなびく たおやかに
いつまでも 眼の底に
焼きついて 離れない
近くを 通りがかると 木の軋む音

あの女性(ひと)が

あの女性(ひと)が

          いる

歩いている 尊い 高貴な
身分と魂の 持ち主のように

やがて 聴こえる 横笛(フルート)の響き

うっとりとする あの音色

村の女達は 嫉妬すら 思いつかない
ただ 敬して崇拝するだけ

村の男達は 恋心さえ 忘れている
ただ ただ 平穏を祈るだけ

あの女性(ひと)がいるだけで
この村は 匂い 芳しく
穏やかな日々が 続く
永遠を 永遠を 永遠すらを
感じさせる

ずっと ずっと
いつまでも いつまでも

ずっと… いつまでも…






あいざわ ゆうき
学習院大学卒