少子社会から黄金の島へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヨーコ・クラーク

 

 

  日本人の人口が減った。

 一昨年このニュースが日本中を駆け巡った。ニュース速報でも流されたくらいだから恐らく一大事件なのであろう。

 人口が減ったのは出生率の低下が原因だという。そして、どうにか出生率を上げようと国は少子化担当の大臣までつくった。

 だが、言わせて貰う。少子化の一体どこが悪いというのか?日本の食料自給率や人口密度などを考えると今まで狭い国土に人が矢鱈と溢れていたように思える。一年中ラッシュアワーの電車の中にいるみたいに。少子化、結構ではないか。

 そうすると人は言う。

 「労働者人口が減ると国を支えきれない」

 「社会保険の負担が重くなる」

 「税金が引き上げられて生活できなくなる」

まあ、要するに少子化で困ることは、お金の問題。全ては金、金、金なのだ。

 それで国や自治体では子育ての経済的負担を軽減する制度を拵えたり保育所を増やしたり試行錯誤を重ねているようだが、本当にこれで出生率が跳ね上がると思っているのだろうか。そのようなことをするくらいならジャニーズ事務所のアイドルの精子でも売り出した方が余程効果的だ。(補助金付きでね)つまり、そのくらい思い切ったことをしないと若い女性は子供を産みたいとは思わないだろうという話である。

 正直言って、こういう状況は気分が悪い。太平洋戦争時、日本は戦地に赴く兵士の数を増やしたいがために「産めや、増やせや」で出産を奨励した経緯がある。とにかく、お国のために尽くせと。今だって理由こそ違えど出生率を気にしているのは国の都合だ。国の都合で産め、増やせと一方的に国民を振り回すのは好ましくないことだと思う。本当に国が国民のことを考えるのなら個々人の自由に任せるのが一番ではないか。

 大体、今まで日本人はニホンオオカミや日本産トキをはじめ数々の動植物を絶滅に追い込んできた。そうしておきながら、いざ日本人の人口が減ると大騒ぎして……自業自得だ。少しはニホンオオカミの気持ちになってみるがいい。武士道の国なら潔く散るくらいの覚悟を持たんか!

 それに数さえ増えれば快楽の挙句の果てにできちゃった子供でも、或いは幼児性の抜けきれない未熟な人間が親になっても構わないというのか? 寧ろ私はそっちの方が恐ろしい。ニュースや新聞で幼児を虐待死させたり傷つけたりする親が後を絶たないというのに気軽な気持ちで人に結婚や出産を勧めるのは愚かとさえ思えてくる。

 かく言う私は現在37歳で独身である。勿論、子供はいない。欲しいと思ったこともない。というか、私は自分自身で自分のダメさ加減を自覚している。生活能力ゼロ、家事能力ゼロ、貯金なし、定職なし、小さなことにもクヨクヨ悩み、過ぎたことをいつまでもズルズルと引きずるタイプで風邪をひいただけでも生きるの死ぬのと大騒ぎしマイナス思考にすぐ陥る。人間関係の処理も極めて苦手で常に周囲から孤立しがち。おまけに驚異のマザコンでもあるのだ。このような人間に果たして結婚する資格があろうか? 母となる資質があろうか? 答えは「ない」。一生一人でいるのが私の人生だ。

 そういえば、先日こんなことがあった。居間でお茶を飲んで寛いでいる時だったろうか。何気ない世間話のついでに母が私に言った。

 「37歳の独身の息子さんがいる知り合いのAさんが、うちに同じ年の独身の娘がいると知ったら「くれ」って言うのよ」

 瞬間、烈火の如く私は怒った。

 「くれとは何だ?! 私は物じゃない!」

このときは本当に腹が立った。目の前に卓袱台があったら星一徹そっくりに引っくり返しているところだった。

 とある国に

 「女性は産む機械」

と発言なさった大臣がいたが、あれは本音だと思う。Aさんは顔も性格も何一つ知らない私を平気で「くれ」と言った。その言葉の裏には

 「孫を産んでくれる道具が欲しい」

 「病気になった時に世話してくれる介護人が必要」

という気持ちが全くないとは言い切れない。私たちの親の世代が、まだこのような考えを持っている限り自分の女としての存在価値に疑問を持ち決断をためらう女性はなくならないだろう。

 では、少子社会をこのまま黙って見ていてよいのかといえば救済方法がないこともない。海外に目を向けてみよう。世界的規模でいえば人口は増加しているのである。それも、もの凄い勢いでだ。

 だったら、海外から日本に来たい人を募り住まわせればよいのだ。ご存知のとおり、日本人は初詣では神社に出掛け、結婚式は教会で行い、お葬式はお寺で済ませるという国柄。どんな宗教が入ってきても受け入れる土壌ができている。食べ物屋を見たって西洋料理からアジア・アフリカ料理まで世界各国、実に様々な料理屋が軒を並べている。こんな国は世界中探したって日本しかないと思う。

 宗教、言語、文化、肌の色を超えて人々が幸せに暮らせるユートピアがあるとするならば、それは日本しか考えられない。私は日本をそんな国にしたい。そうなった時、日本は本当に「黄金の島」と世界中の人々から尊敬され称賛され憧れられる国になるに違いない。