決めつけないで・・・・・・・・・・・・・・・・・・大出希旗



 熱心に聴く人にしか、もしかしたら私たちは何も教えないかもしれません。一生懸命聴く耳を持ち、そして語りかけて下さい。
 精神の病を持っている人は、心の病気です。心の病気、つまり、心の疲れた人です。もしかしたらお近くの誰かが、泣いたり、笑っていた人がいつしかストレスを感じ、ふとそうなる人がいるのかもしれません。心が疲れていると、誰だって幻聴や幻覚を持つ可能性があるということです。
 だから、世の中が「こわい」とか「アホ」とか傷つけるのはいつだって無責任です。みなさんは優しさを大切に、優しさを信じて、優しさを疑わないで真っ直ぐに生きてほしい。私たちはそんな思いをこれからの看護師に求めています。
 これからさき、この心の病に不安を生ずることがあると思います。でも、これだけは信じて欲しい。
医療はすべてメンタルだ≠ニいうことを。
 私たちは居場所をとおして、社会という「つながり」を常に感じています。けれど、これから不安定な時代です。いずれこの施設から出て、働かなければならない人が出てくるでしょう。そんな時、こんなご時世ではありますが皆さんの支えでどうぞよろしくおねがいします。
 ものには必ず理由があります。ひょっとしたらあなたの質問がその人をこれからも支えていく言葉になるかもしれません。自身をもってトライしてくださいね!
 人はロボットではありません。だからといって、精神のことなんてあまり考えたくないのかもしれません。そんな時、精神は『心』だと、迷わず断言できるようになってくださいね!

 世の中には〈優しいうそ〉というものが確かに存在する。
 私は二十歳の時、重い精神病者でした。しかし、周りはそれを知っていて、それでも心の中にしまってくれた。私には生まれながら子供がなつくので、仕方なく様子を見てくれた周りの人たち、子供たちとのお店屋さんごっこや砂遊び。楽しかったなー。
 ありがとう…。でも、周りは心配だったと思います。
 この病気で就職するとき、オープンかクローズかという、自分に対する病気への告白があるでしょう。そのとき、クローズといってやめていくものの中で、それでも、オープンでやめていくももの中でも、辛い心境を孤独に受け入れる、辛いけど、お金の面や病気の理由でそうなる人だっているかもしれません。
 〈優しいうそ〉
 この中にもそんなうそがひた隠されているかもしれません。
 私から見たら、きっと世の中って、もっと複雑なものだと思うなぁ。きっと世の中って、『いい人』と『悪い人』って二つに一つという考え方は、一概には言えなくなっているような気がする。けれど、『悪い人』が足を洗って、さあ人生をやり直そうとしている人を、「さぁ、あいつは悪者だ。」なんていったら、憎しみと憎しみの繰り返しだ。
 もちろん、精神病者の中にも、軽い罪でいつもイジイジして自分を追い詰めてしまう。そんな中にも確かにいる!だけど、いつまでも言ってたって仕方がないじゃん!
 精神病者なんてしょっちゅう「こわい」とか周りに過剰じゃない。でも、本当は何もわかってない。そして、周りの人も実はこの病気がどういうものなのかわかってはいないのだ。それなのに、お互いつっけんどんしても仕方がないのだ。
 もしかしたら、ここに答えがあるのかもしれない。
 みんな一部一部しかみていないからなのだ。
 世の中ってもっと複雑だから、お兄さんにはあまりよく分からないけど、『いい人』と『悪い人』二つしか答えがないっていうのは少なからずありえないな。そして、『優しいうそ』が必ずしもただの弱音だとは、お兄さんは思いたくないな。
 だって、少なからず思いはあるのだから。守っているのだから…。
(2010)