まだまだ貧困は続き、庶民は生活苦に喘いでいる。日本円で月収3000円が平均的な暮らしだ。学校へ行けない子供たちも多い。しかし子供たちの元気な声やはしゃぐ声、まぶしく弾ける笑顔を見ていると、逆境がむしろ生きる力を与え、未来へ輝かせているように見える。

 アンノンビル寺院も、ポル・ポト時代虐殺が行われた場所だ。呪われた場を今は復興の拠点に変えて、子供たちの声が響き合う。

(文・写真/五十嵐勉)


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カンボジア第二の都市バッタンバン。その郊外にあるアンノンビル寺院の境内は夕暮れになると子供たちの声で賑わう。今日は土運び。半分遊びながら、ワイワイとふざけあいながら賑やかに土を運ぶ。砂の山を作って、先祖を供養し、災厄を防ぎ、健康を祈る行事が間近だ。その準備に子供たちが集まる。頭髪の一部だけを残してあと刈り取るヘアーは子供たちが流行病にかからないよう、悪霊につかれないよう祈願する無病息災の風習。あちこちで、こんな子供たちの姿を見かける。


 カンボジアは今、子供人口が急激に増えている。どこへ行っても、子供があふれ、高い元気な声が響いている。ポル・ポト時代、たくさんの人が殺され、人口が激減した暗黒の時代、また世界一多くの地雷が埋められて、そのために命を失った、恐怖の時代、エイズが蔓延し、次々に子供も病に冒された悲劇の時代、それらを乗り越えて、子供の声が満ちている。

  カンボジアの子供の情景